さにあらず物語 [Story]
帰るべき場所を求め、彷徨い続ける一匹の犬がいた。
もう旅は終わりに近づいてる。
その雄犬は、自身の成り行きをじっと待つかのように街角に佇んでいた。
すると、眼鏡をかけた一匹の雄猫がふいに目の前に現れ、きっと睨めつける様な眼差しでこう言った。
「おまえは猫だ。」
投げ捨てるように言葉を吐き出すと、さっと身を翻し裏路地に体を滑り込ませ消えていった。
「おいっ、ネコ!」
一瞬、その言葉の意味を理解しようと思考した隙に、その眼鏡のネコは視界から消えてしまい呼びかけは届かない。
いったい、どういう意味なんだ? どこから見たって俺は犬じゃないか?
おかしな猫もいたもんだ・・・。